それは7月のある日のことでした。
自宅のPC作業で使っているイスを新調したく
「オススメのイスを教えてください」
とフェイスブックで呼びかけたところ、
セラピスト、ボディーワーカー始め、各種の体オタクたちから
山ほどオススメのイスが集まったことに端を発します。
それぞれのイスについてみていくうちに
「良いイスとはなんだろう」
という根源的な問いにたどり着いてしまいました。
一方、わたしは普段ボディーワーカーという仕事をしています。
そうしますと、「腰痛」というのはオフィスワーカーのみなさんからの
最頻出のお悩みに入るのですが、
クライアントさんの問いは「どうしたら治るか」という
ことにほぼ集約されています。
当たり前ですね。
当たり前なのですが、そこでぜひ「イス」とか
「座り方」について見直してほしいと
実は常々思っているのです。
そう思っているボディーワーカーは多いことでしょう。
早速何種類かのイスを試したり、気に入ったものを早速
オーダーしてしまったりと、個人的にも探求しながら
8月のとある暑い日、
臨床の現場で日々みなさんの体の悩みに向き合う
現役ボディーワーカー4人が、「イス」および「座ること」
について探求するために集いました。
そこで交わされた深掘り談義はしかし、
例えば腰痛に悩む人が「腰痛」と
検索した時に出て来る各種情報、
やれ効果的なストレッチ、だの
イスの背もたれは使わずに座りましょう、だのという議論とは
はるか遠い地点に着地してしまったのでした!!
深すぎるかも・・・
ということで今回は、座談会レポートの前につなぎの1回を
特集の第1話としてアップいたします。
まず「ボディーワーク」とは何なのか、
というところからご説明させていただきます。
この観点、実は大事なんです。
どうぞお付き合いください。
「ボディーワークって??」
ボディーワークという言葉に厳密な定義はありませが、
主に「身体に働きかけるセラピー」の総称をボディーワークと言います。
その働きかけの方法は手技であったり、運動であったりと様々ですが、
単にその瞬間の機能構造を整えるということを超えて、
体に働きかけることを通して、心を含んだその人の全体性に
働きかける、というところがボディーワークならではの意義です。
マッサージや、鍼灸、ヨガやピラティスなどもボディーワークですし、
それ以外にも世界中には様々な種類のボディーワークがあります。
私自身も、体調不良がヨガで劇的に改善し、体が楽になったことで
「あとから」考え方や性格や生き方が変わっていった、という経験があり
身体に働きかける、ということの可能性と面白さに魅せられて
身体オタクとしてボディーワークを生業としている者です。
今回座談会に参加したボディーワーカーはそれぞれ
「ロルフィング」
「オステオパシー/ピラティス」
「クラニオセイクラル」
「ボディートーク」
とおそらく多くの方には聞き馴染みのないワークの専門家たちです。
(ひとことで言って、どオタクたち、です)
ボディーワークの大きな特徴として、「気付き(AWARENESS/アウェアネス)」を重視するという点があります。
いきなり怪しい単語・・・と若干ひいている方は
「感じること」「感性/感受性」と置き換えてもうしばらく読み進めてください!
私たちは普段、仕事であれ、日々の生活であれ、「考える」ということに
追われています。
朝起きてから夜寝るまで、今日やらなければいけないことやこれからのプラン、戦術戦略、過去の分析等々、多くの時間を「思考モード」でこな
しています。
ぼんやりスマホを見ている時も、もちろんこの記事を読んでいる時も!
そうしながら自分の体はあたかも自分の従属品のように酷使してしまいがち、
ではありませんか?
わたしたちの体は非常に知性を持っていて、そんな風に負荷をかけられたり、
さまざまに変化する環境やストレス下におかれても
常に文句も言わず淡々と、絶妙なバランスを取り続けています。
そのカラダの知性(インテリジェンス)のスイッチを入れるために
必要なのが「感じる」ということです。
体が、右に傾いているな、と気づいた瞬間、
自動的にまっすぐに修正しようとする力が働きます。
呼吸が浅いな、と気付いた瞬間、
深い呼吸を取り戻そうとします。
お腹すいたな、と気付いたら
何か食べたくなります。
疲れたな、と気付いたら
休みたくなります。
この人好きだな、と感じた瞬間もっと知ろうとします。
この場所なんだか嫌だな、と感じたらその場から去ろうとします。
「カラダは知っている」
とよく言われますが、実に様々なことを知っているのです。
ボディーワークの中には、クライアントへの直接的な問いかけではなく
カラダに問いかけながら、カラダが導く方に進めていくという
技法も数多くあります。
ところが、「考える」というツールにばかり頼りがちな現代人は
「感じる」ことでオンになる「身体の知性」が鈍りがちです。
ビジネスの世界でも近年「感性」や「美意識」に回帰しようという流れがありますが
これらもある意味、使わずに鈍ってきていた「身体の知性」を取り戻そうという
ことに通じるのだろうと思います。
(みんなボディーワーク受けたらいいのに!笑)
ボディーワークが「気付き(アウェア)」を重視するというのは
この「クライアント自身が自分の感覚を感じる」というスイッチを
自ら押せるようになっていくことをサポートしたいからなのです。
「内側からのアプローチへ」
いつもストレスで息を詰めている方の浅い呼吸を
いっとき治療で深くすることは出来ます。
でもそれ以上に、その方自身が
「呼吸が浅くなっていることに自ら気付くことができるようになる」
ほうが、長期的に見たときの恩恵は大きいのです。
本人の意識と切り離された体を、車検に出すようにプロの元でメンテナンスしても
自分の使い方には習熟して行きません。
大きな不調に至る手前の、もっと些細な快不快に気付けるような
身体に対する感受性を育てることが、生き物として持っている
自己調整の力や自然治癒力をより引き出すことになるのです。
良いイスを、「処方」されなくても
自分に合ったイスを選べるようになって行けるほうがおトク♡
体を整える方法論って、数限りなくありますが、
外側から何をしてあげるかというアプローチ、とともに
自分に意識を向けていく、という内側からの自分自身へのアプローチが
とっても大事、
というのが「気付き(アウェア)を大事にする」という言葉が示すそのココロ、です。
長い前置きになりましたが、次回からいよいよスタートする座談会の様子。
そんな風に自分のカラダに対する「外側からのアプローチ」と「内側からのアプローチ」という
2つの方向性の関わり方がある、ということを前提に読み進めていただけたらと思います。
実はこれ、あんまり健康を語る時に世間では扱われない視点だけれど
と・・・っても大事なことだと、なんなら1番大事なことだと!
私は思っているのです。
みなさんの健康観に新しい風が吹くのをどうぞお楽しみください。