臨床身体学

臨床身体学は、身体性の観点で社会や人を読み解き、支援するための学問です。

私たちにとって、身体があることはあまりにも当たり前の事実であり、
その意義を見つめることは日常においてほとんどありません。

また多くの問いが「頭」だけによってなされていて
「身体を持って生きている」という当たり前の事実が置き去りになっていることは
現代社会における一つの病相と言えるのではないでしょうか。

臨床身体学のリサーチクエスチョンは
「身体から見て“よりよく生きる”とは何か?」
です。

なにかよきことを実現しようとしたら、結論を急ぐよりも
私たちはそもそも「ヒト」という生き物としてどのような仕組みになっているのかを問うことが、
より本質的で持続的な「よきこと」への道だと考えます。

身体は、心、環境、他者などさまざまなつながりの媒介変数となり社会にまで接続しています。
身体を考えることは、つながりを考えることでもあるのです。

思えば身体を持って生きることの自由と限界を味わうこと自体が、
机上の論を超えた生々しくとても”臨床的な”営みです。

その意味では生きることに関するすべてのことが、臨床身体学の射程ということも出来るのかも知れません。